名門中学校の指導者、『全中バスケ中止』にショックを受ける選手たちに「まだ引退じゃない、と伝えたい
5/8(金) 11:45配信
──実際のところ、全中がなくなったことで生徒の進路が変わってくる、ということはあるのでしょうか。
大阪の報道が最初に出た時、陸上の顧問の先生が「全国大会は高校推薦のための発表の場でもある、それがなくなったのは残念」という内容の話をしていましたが、私はそうは思いません。個人スポーツとチームスポーツの差はあるかもしれませんが、私たちはバスケットを進学の手段としては考えていませんし、現に高校に行ってバスケットを続けない子もいます。だから、全中は選手にとって大きな目標かもしれませんが、全中がなくなっても彼らの今後が変わることはないと信じています。
──新型コロナウイルスの影響が出始めた頃には、ここまでの状況は想像できませんでした。
全く予想できませんでしたね。でも、子供たちや保護者に伝えたいのは、バスケットをできる環境がずっとありましたが、それは当たり前じゃなかったということです。学校に行けば仲間がいて先生がいて体育館があって、当たり前のようにバスケットをして、土日になれば大会に行って試合をする。家の事情や身体の状態など、いろんな条件が揃った環境でバスケットができるのがいかに幸せか、それは家族に、仲間に、学校に感謝すべきことです。
それは常々言ってきたし、子供たちも分かっているとは思いますが、やっぱり今までが当たり前すぎたので。それがどれだけ幸せか理解して、感謝できるようになれば、今年はこれだけ苦しい思いをしますけど、彼らの将来には財産になるかもしれない。そうなってほしいと思います。
──鶴我先生は今年で定年で、最後の全中が中止となってしまいました。
最後の年になぜ、という気持ちはゼロではありません。過去のチームと比べるのはナンセンスですが、今回は最強の布陣だと思っていたチームですから、それを全中の舞台で披露できないことに悔しい思いはすごくあります。ただ、医療現場の方々が寝る時間を削って命懸けで国民のために戦っていることを思えば、自分のことを言える状況ではありません。それは子供たちも同じで、やりたいことを我慢しなければいけない時です。そのことは自宅でトレーニングをして過ごす支えになると思います。中総体としても、何かしら発表の場を作ってやりたいとの思いはあり、私たちもそのつもりで動いています。いつどのような形になるのか今は明言できませんが、選手たちには「まだ引退じゃないぞ」と伝えたいです。
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